2021-08

住宅建築家のフィールドノート

「家」とは?

先ず、人間は動物界ではかよわい。裸で森に一夜を過ごすことさえ心許ない。そんな弱い人間がなぜ過酷な自然界を生き抜けたのか? それは集団を形成できたからに他ならない。 人間は意思を持ち、相互疎通を図り、集団によって狩猟し、やがて生産し、蓄え、外敵から守り、文明をつくるに至った。 家族は人間社会を構成する最小の単位である。 社会学的には世代を越えて連続する家族集団の連鎖そのものをいうらしく、 必ずしも血縁である必要は無く、文化的な繋がりを継承するものと言えるようだ。 長い歴史の中、人間は家族単位で安住の地を探し続けてきた。それぞれの家族が移動する理由は様々としても、安住の条件を考えその土地の環境と照らし定住を決意した事は現代と差異はない。 環境条件の整った土地地には その他の家族にも同様で定住者は増えていった。 同じ環境を望む家族同士が複数定住したならその地域単位で平等に共通の資源を得、地産地消によって同一の価値観を育むことになる。 食料は狩猟採集から農耕へと移行し、農耕は食の安定をもたらし、安定は未来への継続の欲望を産む。 やがて人間は食料の継続的安定化のために、農耕の拡大と備蓄を目的とした集団を形成する。 豊かな食料をもたらす整った土地は、度々他の集団から収奪される。その為に武器を準備し、建築技術を持って区画される事となる。 全ては家族を守るための行動である。 日本にも「安堵」という言葉があるがこの語源は鎌倉時代より武士が領主から戦果の褒美として土地を分け与えられ、そこに垣根を立て安心して生活する事を指していた。 現代では国という規模まで発達し国際連合という統一ルールに従って共存共栄を目指している。 それぞれの国には得意な分野があって、農業が得意な国、工業が得意な国、商業が得意な国あることは周知の通りである。 現代社会は貨幣経済に変わり、人間の価値は社会を構成する要素となった。 産業革命により交通手段の発達で距離が縮まり、情報革命により時間が短縮された。 思考は複雑化したが人間の求める価値観は変化していない。 地球・自然・人間・社会・国・県・市・町・近隣 「家」とは、集団またはあらゆる不特定要素が突発的に降りかかる社会と、 家族を物質的に区画することで安全を担保し、家族の精神性の平静と継承を図ろうとする空間なのである。
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