シアトルの街並みに自然と建築物の調和はカラーリングだけでも、可能であることを知る

住宅建築家のフィールドノート

湖と森が隣接するシアトルの近代史は19世紀中頃の英国の産業革命と同じくする。
今では全米屈指の住環境を備えた街にボーイング、グーグル、スターバックス、アマゾン・・・etc。
世界に名だたるインテリジェンス企業が本社を置く。
街は今も当時の町並みを残しながら、増え続ける人口の受け皿として、新しいアパートや商業施設の建築が続く。歴史的な保存を考えるほど歴史がない事もあってか新旧「共存」が基軸となっている様子。
そんな街を歩けば、クラシック、ミッドセンチェリー、モダンと、ビルも家もあらゆる建築デザインを楽しむことが出来る。新しい試みにも積極的で建築家としてもやりがいのある街だと感じる。ここでふと疑問を感じる。
建物はバラバラなデザインなのに、全体には不思議な統一感が漂うのはなぜなのだろう?
考えながら数日間滞在してなんとなく気づく。
これこそが色の効用なのではないか?と。
全ての建物にグレイッシュトーンのシックな色が使われている事。
どこを見てもそうだ。
個人住宅も商業施設も然り。
色に対する意識が隅々にまで行き渡り、陳列されるディスプレイから手摺一つさえ手を抜いていない。振り向けばその場面場面でいちいち調和がとれているといった感じ。
シアトルに住む市民が自発的に
『森と湖と空に似合う色使い』を共有する美意識が育っていなければできないことだと思った。
実はこれは凄い事だ。
世界遺産のイタリアのフィレンツェでさえ、法律で素材や色を規制しなければ維持できていない。経済活動活発な市街地に規制がなければがどうなるか中国を見れば明らか。

他人にされて嫌なことは自分もしないのがアメリカの個人主義。
その個人主義の集合体が究極の調和を産んでいるようだ。色の統一という点では日本の京都もそれに当たるが復古主義的で主軸が異なる。
近いとすれば近江八幡の古民家とヴォーリズの設計した西洋建築が調和する町並みだろうか。兎にも角にも新旧調和の街は珍しい。シアトルに行く機会があれば是非、色に注意して散策してもらいたい。
街並の統一が色によってなされる事に感動すら覚えることだろう。

もし僕が宮崎の街並みの統一を色によって成し遂げようとするなら、温暖な宮崎らしく「常緑の植栽の義務化」を提案するだろう。
新築の確認申請時に「建ぺい率」「容積率」等と共に
植栽+植生樹木の植樹を課し、その占有率を「緑化率」として定義すべきだと思っている。建物の自由度を邪魔しないで統一された街並みを作っていくことに貢献すること間違いない。

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